南部圏域の概況

圏域の概況

南部圏域は、沖縄本島南部地域の8市町と那覇市の西から北西部に位置する慶良間諸島、久米島、粟国島、渡名喜島及び東部太平洋上に位置する南北大東島等の離島7町村を含む5市4町6村で構成され、広大な海域に囲まれた多様で豊かな地域特性を有し、平成26年3月に国立公園に指定された慶良間諸島をはじめ、久米島・渡名喜島県立自然公園、ラムサール条約に登録された漫湖干潟など独自の水系環境や糸満市から八重瀬町具志頭に広がる海食崖景観の景勝地、亜熱帯気候が生む多彩な植生・動植物の生態系など、地理的変化に富んだ様々な自然環境も保全されています。

また、世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群(全9遺産)」のうち5遺産が圏域内に存在するほか古琉球から近世にかけての貴重な歴史・文化財も全圏域にわたって多数分布し、1万8千年前の港川人(古代人遺跡)など考古学・人類学上重要な先史時代の遺跡は世界的にも注目され、那覇、糸満、与那原の沖縄三大大綱ひきやハーリー(ハーレー)に代表される伝統行事や独自の進化を遂げてきた伝統芸能も盛んに展開されるなど地域社会の文化的エネルギーには旺盛なものがあります。

さらに、本圏域は、平和と友好による国際交易を展開した琉球王朝の拠点となった歴史や沖縄戦において戦場となった経験を有しており、沖縄戦跡国定公園や平和学習の場として国内外に知られる場所も整備されるなど、今後も歴史的背景に根ざし、平和の尊さを世界へ発信する「平和の拠点」としてのイメージが一段と定着しつつあります。

圏域の総面積は、374.37㎢(令和3年国土地理院資料)となり、沖縄県全体の16.4%を占め、圏域面積のうち約41.3%にあたる154.73㎢は離島町村で占めています。

圏域の人口は、約70万7千人(令和2年国勢調査速報値)で沖縄県全体の48.0%を占め、人口の推移をみると増勢傾向にあるものの、那覇市や近郊都市地域を中心に人口吸引力が強く、離島地域では横ばいか減少傾向をたどっています。
また、平均世帯人員や高齢者率、年少人口比率等の指標をもとに、本圏域の人口構造とその傾向をみると沖縄県全体の傾向と同じく、「核家族化の進行」や「少子高齢化の進展」が顕著にみられます。特に高齢化は離島地域において著しい傾向にあります。

本圏域には、沖縄県の就業者全体の約半数近くが集中し、沖縄県における産業・経済の中心地となっております。就業構造をみると、那覇市とその近郊では観光産業や情報通信産業、商業・サービス業をはじめとする第3次産業の比率が高く、第1次産業の比率が低い傾向が顕著である一方、近郊都市地域や農村・漁村地域、離島地域においては農林水産業の重要性が高く、地域の主要産業となっている地域もあります。ただし、離島地域の座間味村や渡嘉敷村ではサービス産業の占める割合も高く、他の離島地域とは異なる就業構造を有しています。

南部圏域は、沖縄県の政治、経済の中心地である県都・那覇市とその周辺市町で構成される近郊都市地域、農村・漁村地域、離島地域という多様な地域構造を有しています。この広大で多様な地域構造を有する南部圏域が一体となって地域振興を推進するためには、構成市町村それぞれが役割を分担し、広域的な機能連携を図りながら圏域の一体性を強めつつ、バランスのとれた発展を遂げることが求められています。

参考:新・沖縄21世紀ビジョン基本計画(一部抜粋)

3 圏域別展開
(3)南部圏域

【主な特性と課題】
本圏域は、周辺離島町村を含め5市4町6村で構成され、本島南部の糸満市から浦添市まで市街地が連なり、那覇市を中心に高度な都市機能が集積するなど県内外の交流拠点となっています。那覇市より南では農村地域が広がり、さらに久米島、粟国島、渡名喜島、南大東島、北大東島、慶良間諸島等の島々を包含し、都市機能集積地域、農村・漁村地域、離島地域という多様な地域構造を有しています。また、圏域面積は県全体の16.3%を占め、令和2年国勢調査における圏域人口は70万5,759人で、県全体の48.1%を占めています。平成22年の人口と比較すると、本島南部地区の全市町で増加し、特に豊見城市、南城市、南風原町、与那原町、八重瀬町では10%を超える高い増加率となっています。
一方で、離島地域では、座間味村を除いて人口減少が顕著です。
本圏域は、先の大戦において旧日本軍の司令部が置かれ、このため苛烈な戦闘に多くの県民が巻き込まれ犠牲となった地域です。戦争の悲惨さ、平和の尊さを認識し、20万人余の戦没者の霊を慰めることを目的として、沖縄戦跡国定公園が指定されています。
また、琉球王朝時代の神事が行われ、神の島と呼ばれる久高島が一望できる世界文化遺産の斎場御嶽があり、この王朝最高の聖地では、琉球の信仰における神女の最高位「聞得大君」の就任儀式等が執り行われていました。琉球を神の住むべき霊所とする神話や、国づくりを命じられた創世神「アマミキヨ」に関する神話もあり、神話の里としても重要な文化的価値を有しています。さらに、沖縄戦で灰じんに帰した首里城は本土復帰20周年を記念し、国営公園として復元され、首里城跡は2000年に世界文化遺産に登録されました。令和元年の首里城火災により、正殿や文化財等が焼失し、現在、復興に向けた取組を進めています。加えて、那覇市近郊にある漫湖は、多くの水鳥等の生息地として重要であることから、ラムサール条約の登録湿地に指定されており、住民が自然に触れあう場として親しまれています。
本県の歴史・文化・経済を代表する本圏域では、空の玄関口である那覇空港、那覇空港自動車道、沖縄都市モノレール等が整備され、令和2年3月には、那覇空港第二滑走路が供用開始されています。今後、ポストコロナに対応した受入環境整備や臨空・臨港都市機能の高度化が求められています。
那覇市を中心とする都市地域においては、慢性的な交通渋滞等の都市問題への対応、防災等の観点を踏まえたまちづくりが求められています。また、都市近郊地域においては、交通アクセス等の向上に伴い、今後人口増加が見込まれる東海岸地域等において良好な住環境が求められます。一方で、本圏域における、市街地調整区域を多く有する市町村においては、新たな産業用地や住宅地の確保が課題となっています。さらに、糸満市から浦添市までは、市街地が連なる人口集積地域であるため、家族を取り巻く様々な環境や就労形態等を踏まえた多様な保育ニーズへ対応していくことが求められています。
離島地域においては、座間味村、渡嘉敷村をはじめ、世界有数のダイビングスポットとして注目されており、各地域の地域特性を生かした産業振興等の取組が進められています。一方で、高齢化や人口減少に進行等により、地域の活力低下が懸念されています。
 
【展開の基本方向】
本県の行政、産業等の機能が集積している特性を生かし、他圏域との機能分担と連携を図りながら、国際交流都市機能や臨空・臨港都市機能など高度な都市機能を有する基幹都市圏の形成を図るとともに、本県の玄関口にふさわしい那覇空港、那覇港の人流・物流機能の強化や臨空・臨港型産業の集積、MICE等の国際交流拠点の形成、首里城の復興、平和の発信等を推進します。また、離島地域においては、健康・保養等をテーマとして人々に潤いを与える独自の空間構築による地域振興を推進するとともに、独特な魅力ある島内交通、島外交通の充実や地域特性を生かした農林水産業の振興等により、定住条件の整備を図ります。
 
(詳細略)
ア 自然環境の保全・再生及びクリーンエネルギーの推進
イ 歴史文化の継承・発展及び観光振興
 ① 歴史文化の継承・発展
 ② 国際交流都市機能や圏域の魅力を生かした観光振興
ウ 県全体を牽引する産業振興
 ① 臨空・臨港型産業の振興と産業イノベーションの推進
 ② 国際競争力のある情報通信関連産業の振興
 ③ 農林水産業の振興
エ 持続可能な基幹都市圏の形成
 ① 人流・物流拠点の機能強化
 ② 交通渋滞の緩和に向けた交通ネットワークの構築
 ③ 持続可能なまちづくりの推進
オ 生活環境基盤等の充実
カ 離島における定住条件の整備及び地域活性化

沖縄県南部圏域(位置)

市町村別の人口・世帯数・面積

市町村名
(15 市町村)
国勢調査人口(人) 世帯数(戸) 面積(㎢)
(令和3年)
令和2年 平成27年 令和2年 平成27年
浦 添 市 115,741 114,232 46,885 44,041 19.50
那 覇 市 317,832 319,435 144,041 135,532 41.42
豊見城市 64,640 61,119 24,515 21,780 19.31
南風原町 40,458 37,502 14,634 12,763 10.76
与那原町 19,705 18,410 7,952 7,003 5.18
南 城 市 44,071 42,016 15,884 14,295 49.94
八重瀬町 30,958 29,066 10,679 9,625 26.96
糸 満 市 61,025 58,547 23,029 20,647 46.63
久米島町 7,201 7,755 3,329 3,365 63.65
粟 国 村 681 759 378 429 7.65
渡名喜村 348 430 220 267 3.87
座間味村 892 870 501 453 16.74
渡嘉敷村 717 730 389 417 19.23
南大東村 1,289 1,329 680 686 30.52
北大東村 590 629 326 333 13.07
合 計 706,148 692,829 293,442 271,636 374.37