南部の特色について
1.南部の自然
同じ本島でも北部と南部では土壌や成り立ちから異なる
日本最南端の自治体である沖縄県は、行政的には本島の南部・中部・北部と島嶼部に分けられています。長さ約106km、幅約31㎞と細長く、けして広くはない沖縄本島ですが、地質や生物学的には南北でその特性が異なります。北部は別名でもある”やんばる”(山原)の名の通り400m程度の低山が続いており、「国頭マージ」と呼ばれる酸性の土壌で構成されています。一方、南部は「島尻マージ」「ジャーガル」と呼ばれる弱アルカリ性の土壌で構成され、地形的にも比較的平坦であり河川も少ないのが特徴です。こうした条件の違いなどもあって風景としても南部は平坦な印象で市街地を除けば、サトウキビ畑が広がる景色が印象的です。
那覇市と豊見城市の境界付近にはラムサール条約に登録されている漫湖とその周辺のマングローブ林も見ることができます。また、琉球石灰岩を中心とした地質の影響もあって鍾乳洞も多く、なかでも南城市では本島でも最大級の鍾乳洞などを見ることができます。
2.南部の歴史
二万年近く前の人類と三山時代と琉球王朝時代そして沖縄戦
沖縄と言えば琉球王国が有名ですが、統一した琉球王朝になる以前は南山・中山・北山の3つの地域に分かれていてそれぞれに王国があったとされています。この時代をグスク時代あるいは三山時代と呼んでいます。現在で言う南部には南山と中山の一部を含みますが、この3つの大まかな分類は10世紀(~13世紀の説もあります)ごろからされていることになります。3つの王国はそれぞれに貿易をしていました。統一されて琉球王朝が成立し、現在の首里城に王府が移動してのちも明やアジア諸国などとの交易は盛んにおこなわれていたといわれています。その王府が最高の聖地としていた神域、南城市の斎場御嶽など聖域とされる木々、土地や空間などがまだ南部にはいくつか残っています。
明治時代になり、沖縄県と名を改め那覇を中心として南部も近代的な発展をしました。沖縄唯一の鉄軌道である軽便鉄道が那覇-与那原(のちに那覇-嘉手納線と途中分岐して糸満への路線拡張)も走っていたほどです。しかし沖縄戦により破壊されてしまいました。沖縄戦では陸海軍の司令部がなくなった後も戦闘が続いてしまったため、多くの島民と兵士がともに南部へと退避し追い詰められ、悲惨な状況を生み出しました。そのため、多くの戦跡や平和記念公園などが南部に集中しています。また、日本の人類の化石としてもっとも古い時代のものと言われる化石人骨が南部で発見されており、県立博物館や八重瀬町の歴史民俗資料館などでレプリカなどを見ることができます。
3.南部の観光
ドライブでも楽しい。移動時間を気にすることなく時間いっぱい沖縄を堪能できる
那覇空港を有する南部ですから飛行機で沖縄に訪れた場合、時間をぎりぎりまで有効に使うことができます。観光地としては首里城やその周辺の王府に関わる遺跡群や施設。奇跡の1マイルと言われる国際通り。海人(うみんちゅ)の町である糸満方面。沖縄の古い街並みなどを再現した観光施設や鍾乳洞。癒しを求めて訪れる方も多いパワースポットと呼ばれるヒーリングのエリア。マリンスポーツも可能なビーチなども多数ありますし、少し船で移動する沖合の無人島など海を愉しみたい人にもおすすめの場所が盛りだくさんです。
東側の南城市近辺は海を眺めながら快適に走れるドライブコースとしても人気があります。もちろんマリンスポーツだけではなく、ゴルフ場などもありますから沖縄独特の風景の中、特に冬場にゴルフをしに来る方も最近では多いようですし、マラソンなどのスポーツイベントも盛んです。
イベントも季節ごとに首里城を中心とした祭りなどをはじめ、産業まつりや離島フェアなどが奥武山公園で開催されますし、ハーレーや綱引きなどの沖縄らしいしかも県内でも最大級のイベントが各地で開催されるのも特徴です。
4.南部の特産品
海産物・農産物だけではなく様々な工芸品も豊富なのが特徴。
海人(うみんちゅ)といえば糸満。県内でも最大級の漁港を有します。マグロやカツオなどをはじめとして沖縄固有の呼び名を持つ魚や色とりどりの珍しい魚が水揚げされています。この糸満や那覇の泊港には漁協の直売所があり、鮮魚はもちろん沖縄ならではの魚を使った加工品などをその場で味わうこともできますし、買い物することもできます。農産品も各種野菜やマンゴーなどをはじめとする熱帯性の果物なども多種多様です。
沖縄ではやちむんと呼ばれる陶器などの焼き物は器や食器だけにとどまらずシーサーなども作られていますし、琉球ガラスの展示販売もありますので体験なども含めて楽しむことができます。その他にも紅型や琉球絣(かすり)などの織・染などの工芸品も多種多様なものがありますし、沖縄らしさしかも南部らしさは何日でも何度でも存分に楽しめることでしょう。
5.南部の離島
南部と呼ばれる地域には行政区分上7つの離島が含まれます。
とくに本島の南側に位置するというわけではありませんが、空の便にしても船の便にしても那覇からのアクセスになりますから、つながりとしては南部と考えてもよいのかもしれません。面積としてはこの中で最も大きい久米島町はハテの浜・海洋深層水・泡盛やプロ野球キャンプでもおなじみです。
座間味村・渡嘉敷村はマリンレジャーやダイビングスポットで世界的にも有名ですし、伝統的な村落風景が魅力の渡名喜村。塩でも有名になった粟国村。最近では大東寿司や大東そばでもおなじみの南大東村。日本文化と琉球文化の融合により独自の文化をもつ北大東村などいずれも魅力あふれる島々です。